日本円の価値は20年で10分の1に紙屑化した

最近、ドル円の為替は1ドル146~149円台ほどの狭いレンジで推移している。

今後ドル円が円安方向に振れるのか、それとも円高方向に振れるのか、気になる人は多いかもしれない。

今後のドル円の長期的な方向性については、円安ドル高が進むとの見方と円高ドル安が進むとの見方で割れている。

円安ドル高派は、日銀の債務超過と信用問題、キャッシュフローベースの経常収支赤字の常態化、日本の高齢化・低成長に伴う構造的弱体化を根拠に挙げることが多いように思われる。

他方、円高ドル安派は、米国の財政破綻リスクと双子の赤字、ドルの基軸通貨性の衰退、日本政府のネット債務が相対的に低いこと、日本円の購買力平価が過度に落ち込んでいることを理由に挙げる人が多いように見受けられる。

実際のところ、日本円と米ドルの価値を比べることは「ドングリの背比べ」に過ぎない。

偏差値35の高校生同士が成績を比較して優劣をつけても意味がない。

どちらも何の実物の裏付けのない不換通貨だ。量的金融緩和を通じて日本円も米ドルも「ジャブジャブ発行されてきた」点では同じだ(GDPに対する発行規模で言えば日本が群を抜いて大きいが)。

不換紙幣とそうでない資産を比較して、初めて不換紙幣の価値が分かるもの。

その典型がゴールドである。何せゴールドは歴史上通貨として利用され、いまでも主に有事の資産保全先としての重要な役割を担うからである。

20年前と比べてドル建ての金価格は8倍以上になった。円建ての金価格はおよそ10倍だ。

逆に言えば、この20年間で米ドルの価値はゴールドに比べ8分の1になったのだ。

日本円に至っては10分の1である。つまりゴールドの尺度で見ると、20年前の預貯金1億円は今では1000万円の価値しかないということだ。

これを紙屑化と言わずして何と言う?

近年、不換紙幣の紙屑化について様々な人が意見するようになったが、それ以前から誰にも騒がれることなく、静かに不換紙幣の紙屑化が進行してきたのである。

円安ドル高派と円高ドル安派の意見を思い返そう。

彼らの意見が正しければ、日本円も米ドルもゴールドに対する紙屑化はまだまだ道半ばということだ。

〔NY金〕続伸、3677.40ドル=最高値更新(8日)
https://equity.jiji.com/market_conditions/2025090900093

「脱ドル推進機関」である上海協力機構の天津サミットで中国、ロシア、インドのトップが顔を合わせてから、金価格は再び連日、最高値更新ラッシュとなっている。