Fed(FRB)の9月利下げ確率100%というのは本当か?

今月12日に米国の7月の消費者物価指数(CPI)が発表されてから、米国株式市場の雰囲気がますます強気になっている。

総合指数の前年同月比伸び率は2.7%と市場予想の2.8%を0.1ポイント下回った。

関税の影響が価格上昇にあまりつながっていないことを改めて示した形だ。

今月1日の雇用統計ショックで、米国の労働市場が想像以上に弱くなっていることが露わになった。

これらを受けて、市場参加者たちは9月にFedが利下げする確率は100%だと確信するようになった。

また市場参加者の過半数は年内に3回の利下げ(75ベーシスポイントの利下げ)を予想している。

7月のCPIの結果を受け、市場がFedの利下げ再開を確信したことで、米国株式市場はさらにヒートアップしているのである。

また7月の消費者物価指数の公表後、ベッセント財務長官はFedへの利下げ要求をあからさまに行うようになった。

9月に50ベーシスポイントの利下げが望ましいと言っただけでなく、政策金利は現在より150~175ベーシスポイント低い水準にあるべきだと述べた。

パウエルFed議長は、9月に利下げするようトランプ政権と市場に仕向けられている。まるで9月の利下げは既成事実とみなされている。

だがコアインフレ率は前年同月比3.1%の上昇と、市場予想の3.0%を上回り、緩やかに加速傾向にある。

住宅価格の根強い値上がりを基盤にしながら、医療・介護サービスの価格が値上がり傾向にある。

関税の影響は今後しばらくインフレに反映され続けていく。

米国の労働市場について、確かに新規雇用者数の伸びは顕著に減ったものの、依然プラスの伸びだ。失業率は4.2%しかない。

9月のFOMCまでに8月の雇用統計とCPI統計が出てくるので、政策判断はこれらデータに大いに影響を受ける。

とはいえ、現時点において、Fedが利下げを行う環境が十分に整ったわけではない。これまでのデータから言えば、政策金利を据え置くことも十分考えられる選択肢の一つである。

いまトランプ政権と市場がパウエル議長に利下げを要求する様は51年前にそっくりだ。

当時、米国ではインフレ率が10%を超えていたが、一方で失業率も急上昇していた。

ニクソン政権と市場は失業率悪化を食い止めるようFedに利下げ圧力をかけた。これに屈したバーンズ議長は大幅な利下げを始めた。

しかし70年代後半に再び米国でインフレが加速し止まらなくなり、ポール・ボルカーが超金融引き締めを行い何とかこれを少しずつ、何年も掛けながら抑えていったことは良く知られる話。

前回と同じようにパウエル議長が大幅な利下げを行い、その後再びインフレが加速すれば、物価の安定を金融政策の最重要目標に掲げるFedの存立そのものの問題に発展してしまう。二度目はさすがに許されまい。

パウエル議長は利下げを行っても見送っても批判される、そのような運命に向かっているのかもしれない。

だったら最後は時の政権や市場に迎合せず、独立性を有する組織の長として、中央銀行の役割、金融政策の目標に沿って、真っ当な態度で判断を下してもらいたいものだ。