「隠れQE」は風前の灯火

[2024/09/26 ブルームバーグ]FRB緊急貸出制度、金融機関が返済ペース加速も-流動性奪う恐れ

米連邦準備制度の緊急貸出制度を利用していた銀行が、返済ペースを加速させ、金融システムから流動性を奪う恐れがある。

「バンク・ターム・ファンディング・プログラム(BTFP)」は、シリコンバレー銀行(SVB)破綻に伴う危機の深刻化回避に向け、2023年に新設された。銀行・信用組合が最長1年間、低コストで借り入れできるようにすることで、経営難に陥った金融機関の支援と信頼回復が意図された。 

BTFPは今年3月11日をもって新規貸し出しが終了していますが、Fedによるモラルに欠けた汚らしい流動性供給策でした。

普通Fedや銀行が短期資金を貸し出す際は、担保に使われる米国債やエージェンシー債を市場価値で評価します。

当時政策金利は4.5~5.25%程度あり、米国債やエージェンシー債の利回りは高い状態だったので価値は低下し、本来ならば借りられる資金はその分だけ制限が掛かります。

ところがBTFPでは担保価値が額面で評価されたので、金融機関が2020~21年の大規模緩和・ゼロ金利政策のなかで爆買いした米国債やエージェンシー債が当時の価値で評価され、多額の資金を借りることが出来ました。

さらに酷いのはBTFPの貸出金利よりもFedの当座預金の付利のほうが大きく、金融機関はBTFPで大量の資金を借りてFedの当座預金に預けるだけで利ザヤを稼いでボロ儲けできたことです。

Fedは金融機関にフリーランチをくれてやったのです。金融機関の信頼回復のために導入した政策のはずが、金融業界への不信を高める腐った中身だったとしか言いようがありません。

このことがマスコミに報道された途端にFedはBTFPの金利を引き上げましたが、すでにBTFPの新規貸出終了予定日まで2カ月を切っておりパフォーマンスに過ぎませんでした。

先日Fedが0.5ポイントの利下げをしたことで預金準備率も同じく低下し、BTFPとの金利差がますます悪化したため、金融機関は同プログラムから借りたお金の早期返済を考えているようです。

ただBTFPの借入は裁定取引をするために昨年11月から今年1月にかけて急増したので、早期返済しなくてもあと1カ月ほど経てば満期を迎え始め、BTFPによる融資額はゼロに向けて急速に萎んでいきます。

BTFPの借入残高はピーク時に1680億ドルで、ピーク時に2.6兆ドルあったリバースレポ残高の縮小というもう一つの「隠れQE」に比べれば、市場に与える流動性の規模は小さいものでした。

ただFedが量的引き締めを行う中で市場に流動性が供給されるという昨年の歪な金融市場を形成した一人の役者であることには違いありません。

その役者が消えることになります。リバースレポ残高もほとんどなく、「隠れQE」を起こす力は風前の灯火にあります。

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