賃上げ率はインフレ率を上回っているのに実質賃金が25か月連続マイナスの伸びとなった理由

[2024/06/05 東京新聞]実質賃金、25カ月連続で減 最長更新、4月マイナス0・7%

厚生労働省が5日公表した4月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、物価変動を考慮した1人当たりの実質賃金は前年同月から0・7%減った。マイナスは25カ月連続となり、3月に続いて過去最長を更新。物価高騰に賃金上昇が追い付かない状況が続いている。

今回の実質賃金のマイナス成長は特別な意味を持ちます。

何故なら「官製賃上げ」が反映され始めたにも関わらず、賃金上昇率が物価上昇に追いつかなかったためです。

従業員の約7割を雇用する中小企業の賃上げ率は3.62%であり、大企業の賃上げ率5.58%には及ばないものの、4月のインフレ率2.5%より大きいです。

それなのに実質賃金がマイナスなのは、一つはこうした賃上げ率は正社員に限った話であり、非正規労働者は蚊帳の外に置かれ、賃上げの恩恵に与っていないためです。

また毎月勤労統計をよく見ると、昨年7月から所定外労働時間を中心に、労働時間が短くなっていることに気が付きます。

時間外労働規制が4月から導入された運輸業・郵便業では所定外労働時間が前年比5.4%短縮、製造業が6.4%短縮などとなっています。

業界によって労働時間は短くなったところと長くなったところに二分されています。

ただ全体として見れば、企業は時間当たりの賃上げには応じる一方で、残業を中心に従業員の労働時間を減らすことで、人件費の上昇を抑えているのです。

これらが、賃上げが始まったのに実質賃金が依然マイナスであることのからくりです。

賃上げは6~8月に本格化すると言われています。

ところが6月請求分から電気・ガス代の負担軽減策の半減と再エネ賦課金の爆上げにより、電気料金は値上がりします。

さらに7月請求分で電気・ガス代の負担軽減策の残りがなくなり完全廃止となることで、電気料金は2カ月連続の値上がりとなります。

たった2ヶ月で、全国の一般家庭の電気料金は軒並み800~1200円程度上がります。

率にすると、7月の電気料金は前年より17.2~46.4%の値上がりです。

6月から賃上げが本格化しても、電気料金の値上げが実質賃金の上昇の足を引っ張ります。食品値上げも待っています。

実質賃金のマイナスが続くことで、岸田政権は企業に賃上げを促し続けることができ、企業は消費者に価格転嫁しやすくなり、インフレは長期化します。

財務省にとって、実質賃金がどうなろうと知ったこっちゃありません。インフレさえ継続すれば良いのです。国の借金は目減りするし、消費税収は増えるし、実質の年金給付額は減らせるし、良いことずくめですから。

「官製賃上げ」は、日本国民を豊かにするためでなく、財務省が財政健全化を進めるために都合の良い手法なのです。

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