「ペトロ人民元」構築に向けた動きが鮮明になり始めた

「現在は100年ぶりの世界の大転換期」との認識で両者が一致した、中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領のモスクワでの会談からおよそ一週間。

何だか世界が急激に動いているように感じるのは気のせいでしょうか。

昨年の終わりに習近平国家主席がサウジアラビアを訪問し、サルマン国王、ムハンマド皇太子と会談し、サウジアラビアは米ドル以外での石油販売の可能性を否定しなくなりました。

その後に何が起こったのか。

●昨年12月18日サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコと中国石油大手の中国石油化工(シノペック)は、中国南東部・福建省に新しい石油精製・石油化学コンプレックスを建設で合意しました。

日量32万バレルの製油所と年150万トンの熱分解施設を建設する計画で、2025年末までに操業を開始するとのことです。
https://jp.reuters.com/article/saudi-aramco-sinopec-corp-refinery-idJPKBN2T301Q

●3月26日サウジアラムコは中国国営企業2社との合弁会社が中国の遼寧省盤錦市に精製・石油化学コンビナートを建設すると発表しました。

精製能力は日量30万バレルで、エチレンとパラキシレンの年間生産能力はそれぞれ165万トンと200万トンです。建設費は100億ドルの見込みで、今年4~6月期に着工し、2026年のフル稼働を目指します。
https://jp.reuters.com/article/saudi-aramco-china-refinery-idJPKBN2VT05D

●3月27日サウジアラムコは中国の民営化学大手の栄盛石化に246億人民元を出資し、株式の10%を取得することを発表しました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR278XZ0X20C23A3000000/

日本語の記事には書かれていませんが、サウジは精油するための原油の大半を中国に供給することを約束しています。
https://www.zerohedge.com/markets/huge-chinese-push-aramco-worlds-biggest-oil-producer-will-build-10bn-petrochemical-complex

おわかりだと思いますが。サウジは中国に石油下流部門・石化部門を進出させることで「ペトロ人民元」(人民元建ての中東産原油販売)を実現しようとしているわけです。

習近平主席がサウジアラビアを訪問してわずか3カ月あまりで、ペトロ人民元強化に向けた具体的な動きがここまで出てくるとは、ちょっと驚きです。

今年10日には断交中でイエメン戦争を通じて代理戦争中だったサウジアラビアとイランが、中国の仲介で電撃的に和解したことも驚きました。来月までに両国の外相が会談する予定とのことです。

中東最大の産油国と、中東最大の天然ガス埋蔵国の両国が和解したことになります。でもエネルギー市場におけるインパクトはもっと大きなものです。

天然ガス埋蔵量世界第2位のイランは、世界第3位カタールと共同で、世界最大のガス田である南パールス・ノースフィールドガス田を運営しています(両国を跨いで海底でつながっていて。自国に属する分を生産しています)。

世界最大の天然ガス埋蔵国であるロシアは、OPECプラスやシリア内戦を通じてイランや中東各国との関係を強めてきました。

ロシア、イラン、カタールを合わせると世界の天然ガス埋蔵量の3分の2近くを占めます。

中国とロシアがバックにつくなかでなされたサウジとイランの和解は、世界の大半の石油・ガスを米ドル経済圏でなく人民元などの非ドル経済圏でもっと流通できるようになることを意味します。

ペトロダラーを武器とした米国に政治・経済の面で両国や両国のエネルギー資源を良いように利用されてきた苦い歴史に終止符を打つことにつながり、ユーラシアの発展のために平和利用される道が拡がっていくのではないでしょうか。

イスラエルは湾岸諸国と関係を強め、対イラン包囲網を強化しようとしていましたが、その外交政策にも大きな修正を余儀なくされそうです。

ネタニヤフ政権が三権分立を破壊し独裁政権をつくろうと画策した司法改革案の審議も中断となり、極右政権が暴走して「ハルマゲドン」を引き起こすリスクも後退したように思います。

台湾の馬英九前総統が中国を訪問しましたし、第三次世界大戦の火種がくすぶる中東と台湾で、中国が主導する形で外交的解決に向けた動きが進んでいるように思います。

ロシアがウクライナ戦争を長引かせているおかげで、西側諸国は武器、弾薬などの軍需品の提供をウクライナに集中せざるを得なくなっています。

台湾や中東に軍需品や軍人を十分に提供できない間に、習近平主席が中東やロシアを飛び回って外交を行い、大きな成果を上げているのが現状です。

欧米で銀行破綻が相次ぎ高インフレ下での金融不安が続く中で、中国が外交を進めて各国の調停をしたり経済協力を急速に強める姿は一層鮮明に映ります。

長い目で見れば、世界は良い方向に向かっているように見えます。

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