銅需給は長期的に逼迫していきそうだが…

銅先物が9か月ぶりの買い越し規模となったようだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB064UF0W3A200C2000000/

銅価格は中国のゼロコロナ政策と米国の急激な利上げによる景気後退懸念から、昨年4月から6月にかけて3割以上下落したが、その後3割程度値上がりした。

同じ「3割」だが、下落時の「3割」は上昇時の「3割」よりも影響が大きいので注意。いまの銅価格は昨年4月より10%以上低い水準だ。
https://tradingeconomics.com/commodity/copper

銅価格の回復は、米欧の金融引き締めによる景気悪化懸念が薄れたほか、中国の経済回復期待が背景にあるそうだ。

ただ実際の先物ポジションを見ると、確かに買い越しではあるが、その規模は2021年の1/3に過ぎない。

中国の本格的な景気回復に自信を持てるデータが出ていないこと、不動産市場の問題が解決したわけでないこと、米国の堅調な雇用者数を受けて金融引き締めが再び強まることへの懸念が、銅価格の上昇に歯止めを掛けている。
https://www.investing.com/economic-calendar/cftc-copper-speculative-positions-1620

銅は電気自動車の配線や再エネの送配電網の敷設に必須の金属で、需要は長期的に間違いなく伸びていく。

供給は不足している。鉱床の開発コストの上昇、鉱山開発認可が下りるまでの期間長期化、税金・ロイヤリティ率の上昇などにより、銅山会社は増産に消極的となっている。先進国の脱炭素要請も増産を控える格好の言い訳になる。

よって銅は長期的に需給逼迫が続くことがほぼ確定している。

しかし主要銅山会社の経営状況は決して安定しているとは言い難い。

フリーポート・マクモランは昨年7~9月期にフリーキャッシュフロー(FCF)がマイナスとなった。当時銅価格は急落後の低迷期にあったが、それでもパンデミック前より2割戦後高値の水準にあった。にもかかわらずFCFが流出したのだ。

サザン・コッパーは同期間にFCFはプラスだったものの、負債が多く、今後銅山の開発を積極的に進める方針のため設備投資は大きく増え、財務は悪化していく。

両企業とも、銅価格が急落すれば大赤字必至だ。いまは昔と違い高金利なので、大赤字になった場合、経営破綻に直結してしまう。

銅の見通しが明るいからと言って、銅関連銘柄に投資して上手くいくとは限らないのだ。