金融緩和継続とばら撒きで円安・物価高の本格化が日本に迫り来る

[2021/10/14 ブルームバーグ]FOMC議事要旨:テーパリング、11月半ばか12月半ば開始で一致
 
米連邦公開市場委員会(FOMC)は9月21-22日に開いた会合で、テーパリング(資産購入の段階的縮小)の11月半ばあるいは12月半ばの開始で当局者の意見がおおむね一致した。13日公表された議事要旨で明らかになった。
 
議事要旨によると、「現在想定しているよりも供給障害と労働力不足が長期化し、物価や賃金により大規模で持続的な影響を与える恐れがあるため、大部分の参加者はインフレリスクが上向きに傾いていると判断した」という。

 

[2021/10/13 日テレNEWS24]衆院選前に…各党「現金給付」合戦、首相は
 
公明党や野党各党は12日、衆院本会議の代表質問で、新型コロナウイルスで影響を受ける家計への支援策として、現金給付を打ち出しました。
 
石井幹事長「公明党は子供たちを(新型)コロナ(ウイルス)禍から守り抜くための特例的な支援策として、0歳から高校3年生の年代まで、子供1人あたり10万円相当の『未来応援給付』を実施すべきと考えています」
 
立憲民主党・福山幹事長「低所得の皆さんに対する12万円の特別給付金を支給し、家計を支え、消費する購買力を高めます」
 
共産党・志位委員長「コロナで収入が減った方々を、中間層も含めて広く対象にして、1人10万円を基本に『暮らし応援給付金』を5~6兆円の規模で支給することを提案します」
 
国民民主党・玉木代表「給付を必要な人に迅速に届けるため、いったん全ての国民に一律10万円を給付し、高所得者には後で課税時に逆還付を求めることを提案しています」
 
岸田首相は「可能な限りプッシュ型で迅速に給付を行わなければならないと考えております。総合的かつ大胆な経済対策を策定いたします」と述べました。

 
日本は金融政策において世界の潮流から孤立しそうな状況にあります。
 
現在、世界の中央銀行は利上げやテーパリングを実施し金融引き締めや金融緩和縮小の方向へと大きく転換し始めています。
 
トルコ、ロシア、ブラジル、メキシコなどの一部新興国は早くから利上げを行っていました。先進国でも、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアがテーパリングに着手し始めました。そしていよいよ米国もこの潮流に乗ってきます。
 
利上げやテーパリングへのシフトは、ロックダウン解除後の経済活動の再開、人手不足、原材料不足、サプライチェーンの混乱、エネルギー価格の高騰でインフレ率が世界的に高まっており、これを抑制するためです。
 
EUもインフレ率は3%台に達し、天然ガス価格の高騰に苦しんでいますから、ECBも最早テーパリング実施に迫られることでしょう。
 
世界のインフレ率が上昇する中、日本のインフレ率だけはパンデミックに関係なく緩やかな下落傾向が続いてきました。
 
4月から携帯電話通信料金が値下げとなったことが一つの理由ですが、より本質的な理由は賃金が上昇しないためです。賃金が上がらなければ消費は増えず、企業は値上げしにくくなります。
 
野菜やガソリンの価格が値上がりし、食品の値上げが相次ぎ、実感としてはインフレが進んでいるように思えますが、統計的にインフレは進んでいないのです。
 
インフレ率が2%の目標にいまだに達しないわけですから、日銀はテーパリングや利上げに踏み切る理由がありません。
 
またデルタ株が世界的に収束し、先月に米国が失業給付金上乗せ措置を終了した中で、日本では今度の衆院選に向けて、各政党がばら撒き政策を公約に掲げています。
 
最もばら撒きが少ない公明党の案でも、15歳未満の人口は1500万人ほどいるため、1.5~2兆円程度の財源が必要になります。当然財源は国債発行で賄われ、日銀がこれを買い取ることになります。
 
日本だけは量的緩和やマイナス金利政策から脱却する兆候が見られません。世界の金融引き締め・緩和縮小トレンドに逆行することになりそうです。
 
そうなれば当然、円安が進行しやすくなります。輸入物価が高くなり、エネルギーや食料の価格が値上がりしやすい状況が続くことになります。
 
輸入物価が高い状況が進めば日本から外貨が流出するペースが増え、ますます円安が進むことになります。
 
円安が進み、ガソリンや食料などの物価が高くなれば、人々の生活はますます苦しくなり、有権者は政府に追加のばら撒きを求めるようになります。それは円安・物価高要因になります。こうして悪循環がグルグル回ることになります。
 
日本は円安・物価高の悪循環に本格的に嵌まってしまうのでしょうか。奇しくも、こうした未来への懸念が一気に強まるなか、財務省の矢野康治次官が将来の財政破綻に警鐘を鳴らす寄稿を提出しました。