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今回は、今年4月12日に紹介したテクノロジー銘柄のレビューです。
この銘柄は米国のアマゾン、アップルを始めとした主要テクノロジー企業と遜色ない成長を続けてきました。
青:当該銘柄
にも関わらず、長きにわたり株価は一人負けし、現在まで低迷が続いています。
青:当該銘柄
この銘柄の株価は、将来の成長リスクがあるから低迷しているのでしょうか?
答えはノーです。この銘柄ははっきり申し上げて成長の塊以外の何物でもありません。
現在まで二けた成長を続けてきた売上の中心を占める事業は、今後成長が鈍化しそうですが、それでも一けた台後半の成長をしばらく維持することが可能です。
この銘柄で最も成長が期待できるのは、この銘柄企業が戦略的分野と称する、デジタルサービス分野です。
戦略的分野は個人向け・企業向けのデジタルサービスとフィンテックで構成されます。
これらデジタルサービス分野はこの銘柄の売上の15%超を占めており、大きな成長が続いています。
特に、個人向け・企業向けのデジタルサービスの伸びが著しく、パンデミックに関係なく20%-30%台の成長を続けています。
この銘柄は、アプリの花形とも言える無料のメッセージアプリ(Lineようなアプリ)を開発しました。
このメッセージングアプリは当初、フェイスブック子会社のワッツアップに押されていました。
しかし今年1月、ワッツアップは親会社のフェイスブックと多くのデータを共有できるようにする、世界共通のプライバシーポリシーの変更を発表しました。
これをきっかけに、プライバシー保護への意識が強い市民は紹介銘柄が開発したアプリに次々と切り替えていったのです。
現在、この銘柄が事業を行う国の人口に相当する回数がダウンロードされ、人口のおよそ3割がアクティブユーザーとなっています。
またこのアプリのアクティブユーザーの27%は海外ユーザーであり、ユーラシアを代表する主要なアプリになりつつあります。
アプリから膨大な個人データを収集・蓄積・分析し、幅広い個別化サービスを提供したり、アプリ間の連携でサービスの利便性を高められます。
コミュニケーションアプリは有用な広告媒体であり、デジタル広告からの収益増が今後期待できます。
他にはビデオ会議やクラウドストレージサービスなどを企業向けに展開することを考えているほか、クラウドゲームサービスやゲームの開発にも取り組むとしています。
企業向けデジタルサービスは、この銘柄の戦略的分野で現在最も売り上げが大きいです。
データセンター、クラウドテクノロジー、マネージドサービス、サイバーセキュリティ、IoTなどの統合型ICTサービスを提供します。
今後、セキュリティ、ロボット自動化、IoTが成長分野だとしています。長期的にスマートシティが大きな成長分野となるでしょう。
最後の戦略的分野である金融サービスは、昨年に収益が大きく減少しました。
スマートフォン決済やカード決済サービスの他に、個人や企業への融資・保険事業を行っています。収益の減少は後者の個人への融資事業が原因です。
他方決済サービスはパンデミック時も順調で、一年間で78%売上が増えました。感染を防ぐためにキャッシュレス決済のニーズが増えた影響があります。
アクティブユーザーは550万人にすぎず、これから大きく成長する余地があります。
この銘柄は研究開発組織を持っており、1300人のエンジニアがデータ分析、人工知能、ブロックチェーン、ネットワークテクノロジー、IoT、VR/ARに関する研究をしています。
昨年末時点で国内外で2800件超の特許を出願し、700を超える特許が付与されています。
モバイルや光回線の速度でトップであることや国内最大のデータセンターを持つことと併せて、先端技術への投資や研究開発にかなり積極的であることが、デジタル分野でのこの銘柄の勢いを感じさせます。
この銘柄は、いわばアントフィナンシャルとテンセントと中国移動を融合したような、統合型テクノロジー企業になっていきます。
このようなビジネスモデルを持つ会社は、米国や中国に存在しません。
巨額の設備投資に余裕で対応できるキャッシュリッチ企業
今後も大きな成長に期待できるのに株価が低迷しているということは、財務に問題があるからでしょうか。
答えはノーです。
確かにこの銘柄はハード、ソフトの両面での投資が必要なことから、設備投資は高水準が続いています。
これまでしばしば売上の20%以上を投資してきましたが、今年に入り売上の25-30%の設備投資をしており、勢いがかなり増した感があります。
しかしこの銘柄はあまりにも業績が好調のため、これだけの設備投資を営業キャッシュフローからすべて捻出できるだけでなく、余ったキャッシュフローから配当を余裕で支払えます。
負債や増資で無理に資金調達する必要はありませんし、必要であれば所有する子会社を分社化して資金調達することも可能です。
純負債EBITDA倍率は0.9倍にすぎず、負債の大半は2025年以降に満期を迎えます。財務に全く問題ありません。
サイクルの大転換へ
この銘柄は株価が低迷し続けたおかげで、バリュエーションがものすごいことになっています。
この銘柄のP/Eレシオは7.51倍と割安です。しかも大きな成長が期待でき、今後毎年15%ずつ成長すれば、PEGレシオ(PER÷成長率)は0.5倍にすぎません。PEGレシオが1.0倍を下回れば割安と言われますから、この銘柄は非常に割安です。
この銘柄は利益の50%以上を配当として支払う方針であり、ちょうど50%を支払う場合、現在の株価では6.6%の配当利回りで投資できます。
配当支払い額は年により変動があるため常にこの利回りを期待できるわけではありませんが、過去の支払い履歴から毎年4%台~7%台という高い利回りを期待できます。
配当金は毎年二けた成長することが可能です。場合によってはドル建てで20%台の配当成長率が続いても不思議ではありません。
この銘柄は、8月2日に配信した「[アボマガ No.176]サイクルの潮目」で買い推奨したものです。
この銘柄の株価が低迷したのは、あるサイクルが10年ほどネガティブな方向に動き続けたためです。
しかしこのサイクルは、最近の投資家の動きや経済指標を観察するかぎり、いよいよ反転上昇しそうな雰囲気にあります。
米国の8月の雇用者数が予想を50万人も下回り、Fedが年内のテーパリングを行うのか微妙な状況となってきました。テーパリング意欲低下は最終的にこの銘柄の株価値上がりにプラスに働くことでしょう。
サイクル大転換までのカウントダウンまで、残りは…