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質素でいることが最強の生き方-デメリットを考える-

   質素で暮らすことが最強と言ってきましたが、もしかしたら皆さんの中には次のように考える人がいるかもしれません。 それは質素に暮らしていると、リッチに暮らしている人の行動をうらやましく感じてしまうのではないかということです。 要は他人との比較によって嫌な気分を味わってしまうことです。


   確かに、ふとネットでSNSを見たときに友達が複数人でおいしい食事を楽しんでいる写真とかを見せられると、ちょっとした嫉妬心が生まれることもあります。 私もどちらかというとちょっと嫉妬深い性格なので、ちょっとイラッとするときもあります。


   だけどこのデメリットはそんなに難しいことをしなくても解消可能です。 他人と比較する状況をそもそも作らなければいいだけの話ですから。


   不要にSNSを見ない、そもそもSNSをやらないなど、不要なコミュニケーションツールを絶ってしまえばいいだけの話です。 自分と他人を比較するためには、比較する他人を排除すればいいのです。 別に自分を変える必要などほとんどないわけですから、比較的簡単に対処することが可能です。


   質素に暮らすことのデメリットは所詮は他人依存な話です。 別に自分の性格とか行動を根本から変える必要はありません。 無駄なノイズに不用意に自分を晒さなければいいだけの話ですから。


   私も最近はSNSを出来るだけ見ないようにしていますが(ただしナシーム・タレブの投稿は除く)、おかげで友達と自分を比較する考えさえ思い浮かばないくらいです。 ノイズに晒さないことによる効果は絶大です。


   では今度はリッチに暮らしている人たちの方に目を向けてみましょう。 リッチに暮らすことの直接的なデメリットは、もちろん浪費が増えることです。


   ではこのデメリットを解消するためにはどうする必要があるでしょうか。 それは参照点を低く設定しなおすことです。 何故なら浪費を減らすには継続的に浪費を減らす必要があります。 そのためには自分の欲のレベルを何段階か下げなければいけないです。


   しかし参照点を低く設定しなおすことは場合によってはそう容易いものではないです。 だって参照点を低く設定するためには、Lossを受け入れることと欲を抑えること、どちらも必要になるからです。


   Loss aversionという、絶対に損なんかしたくない!そんなんてありえない!という性質が宿っていますが、高い参照点を低く設定しなおすためには絶対に現状からの損を受け入れる必要があります。


   いつも悠々とタクシーを使っている人が参照点を低くするためには、多くの人が乗車する電車を使う必要があります。 ブランドものの高価なジャケットを着ている人が参照点を低くするためには、ユニクロの服を買う必要があります。


   参照点を低くするためには必ずこうした「落差による損」を受け入れる必要があります。 しかしLoss aversionという性質を考えれば、それは言葉ほど容易くはないはずです。


   実際銀行員として働く友達は社会人になった後よくタクシーを使っているようで、私が「うらやましいなぁ」と言ったら彼はポツッと「いや、慣れるとやめられないんだよ」と言ってました。


   しかも一度タクシーに乗るとかおいしい料理を食べるとかに慣れてしまうと、またそうしたことをしたいという欲が生まれてきます。 欲に対抗するのが物凄く大変なのは誰だって知っていることです。


   参照点を低く設定することの大変さは仏教を考えてもわかることです。 仏教を行う意義の一つに煩悩を捨て去ることがありますが、これは参照点を最低ランクにまで下げきることに他ならないと思っています。 参照点を下げればもはやちょっとのことで幸せを感じられるようになるはずであり、間違った欲に溺れることも少なくなる、心理学的にはそんな風に捉えられるのではないでしょうか。


   煩悩を捨て去るために仏教の修行僧たちは毎日朝から晩まで修行三昧、食事も至って質素な精進料理、こうしたことを休みなく繰り返しています。


   こういう風に考えれば、参照点が高い人が参照点を低く設定することの大変さがわかることでしょう。


   それにリッチな人は質素に暮らしている人よりもよっぽど他人との比較にセンシティブなはずです。 リッチであればそれだけプライドが増すからです。


   こういうことを考えると、質素に暮らすことのデメリットは対して大きくないですよね。 質素に暮らすよりもリッチに暮らすことの方がよっぽどデメリットが大きいし、気持ちの浮き沈みが大きくなるように思えます。


   質素に暮らすことのデメリットは行動を変えることで解消されますが、リッチに暮らすことのデメリットは根本を変えなければ解消されないのです。


   「失うものは何もない」とは言いますが、この言葉を何のためらいもなく発言出来る人が一番の幸せ者のように感じます。

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