SIPCで保護資産-REITやETFは保護されるの?-

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SIPCで保護資産-REITやETFは保護されるの?-

今回は万が一利用しているアメリカの証券会社が清算(Liquidation)したときに保護される資産について簡単に説明します。

 

 

証券会社の清算時に保護される資産

アメリカ証券会社がLiquidationをしたときには、SIPCとFDICが口座に預けていた証券や現金を保護してくれます。FDICによる保護は一部の現金などで、SIPCが保護を行う主要機関となります。

 

まずは利用している証券会社がLiquidationしたときに、どのような資産が保護されるのかを見てみましょう。SIPCとFDICによって受けられる保護の対象と保護額の上限は大体次のようになります:

 

  SIPC FDIC
保護対象資産

・証券投資家保護法(Securities Investor Protection Act)で定義された"証券"。株式、債券、投資信託など
・Cash accountに預けられている余剰資金
・Sweep accountに預けられている現金のうち、銀行のSavings accountへの預け入れ以外によって運用されている部分

・Sweep accountに預けられている現金のうち、銀行預金(通常の利息がつく預金や市場金利連動型普通預金)によって運用されている部分
※市場連動型投資信託などで運用されている分はSIPCによる保護の対象となる

保護対象外資産

・通貨(Currency)
・商品(Commodity)
・先物(Futures contract) など

 
保護上限額 50万ドル(このうち現金は25万ドルが上限) 25万ドル

 

SIPCによって保護される資産について詳しくはこちらをご覧ください。

 

今回の記事で扱うのはSIPCによって保護される資産は具体的になんであるか?ということについてです。

 

上の表には一般の株式や債券、投資信託(Mutual fund)といった資産が保護されると書いてありますが、例えばREITやETFといった皆さんがよく取引する投資商品はSIPCによって保護されるのでしょうか。

 

証券の法的な定義は非常に曖昧

SIPCによって保護されるかどうかの判断基準となるのは、1970年に施行された法律であるSecurities Investor Protection Actで定義されている"証券"に該当するかどうかです。

 

一般の株式、債券、投資信託などは法的に証券に該当すると明記されています。また上の表にあるように、現金や商品、先物については一般的に証券とみなされないため、SIPCによる保護を受けることは出来ません。

 

例えば証券会社を通して金や銀の現物を保有している場合に証券会社が経営難に陥って清算してしまい、しかもその証券会社が勝手に私たちの金や銀を売却してしまっていた!なんて不正が発覚しても、失った金や銀は二度と戻ってこないということです。

 

株式や債券、商品といったようにすべての投資商品に対して、法的に"証券"であることが白黒はっきりされていればこちらも判断するのがとても楽になるのですが、現実は必ずしもそうではありません。

 

厄介なのはSecurities Investor Protection Actで定義されている"証券"の定義が曖昧で、現在保有している証券(だと私たちが思っているもの)がSecurities Investor Protection Act上の"証券"として該当するのかどうか簡単に判断できないのです。

 

実はREITやETFといった金融商品は法文上で証券に該当すると一言も明記されていません。私たちはREITやETFを投資信託に似た証券だと勝手に思い込んでいますが、果たして法的に"証券"だと認められるのか?ここをチェックしないと万が一のときの保護を受けられない可能性があるのです!

 

実際のところREITやETFといった金融商品は法的に"証券"と見なされ、万が一のときにもしっかりと保護を受けることは出来るのでしょうか?

 

REITやETFは法的に証券と見なされるのか?

まずREITについては、SECに登録されていれば保護対象となるとSIPCのホームページに記載されているので間違いないです。
→Are Real Estate Investment Trusts (REITs) protected by SIPC?

 

※SEC(Securities and Exchange Commission)とはアメリカの証券取引の監督等を行う機関のことです。日本でいうところの金融庁みたいなものです。

 

アニュアルレポートや四半期レポートを定期的に公開しているREITであればほぼ間違いなくSECに登録されていると思ってよいでしょう。

 

次にETFです。ETFに関してはSIPCのサイトにも他のサイトや書籍を探しても明記されていなかったのでどうしても推測になってしまうことをご了承ください。

 

まず株式ETFや債券ETFといった一般的なタイプのETFであれば基本的には保護対象だと思われます。もう少し正確に言うと、Investment Company Act(別名:1940 Act)という法律のもとで投資信託(Mutual fund)であると正式にSECに登録されているETFであればおそらく大丈夫でしょう。

 

SECによるとETFとは「1940 Actのもとでオープンエンド投資会社またはユニット・インベストメント・トラスト(どちらも投資信託に含まれる)として登録されたもの」を指しているので、通常の株式ETFや債券ETFは投資信託に該当し、SIPCにより保護されるものと思われます。

 

例えば有名なETF商品であるブラックロックのiSharesの多くのETFは、1940 Actのもとで投資信託であるとSECに登録されているとあるので、SIPCによる保護を受けられるでしょう。他の有名どころのETFもおそらく大丈夫でしょう。

 

しかしETFの中でも例外のものが存在します。それはコモディティETFといった証券以外の資産によって運用されているETFです。金ETF、原油先物ETF、通貨ETFなどです。

 

このような例外的なETFは1940 Actの対象外であり、この法律のもとで投資信託であるとSECに登録されていないことが一般的のようです(各ETFの目論見書(Prospectus)をみると、1940 ActのもとでSECに登録されていないことを確認できます)。

 

よってコモディティETFといった例外的なETFは投資信託と見なされず、何かしら別の"証券"とみなされる裏付けがない限りSIPCによる保護の対象からは外されることを意味するものと思われます。

 

では金ETFや原油先物ETFといった例外的なETFはSIPCによる保護を受けられないのでしょうか?

 

例外的なETFはSIPCの保護を受けられないのか?

確かなことは言えませんが、通常のETFとは別の形であれSECに登録されていれば保護の対象になるかもしれません。

 

SIPCのページに書いてある"証券"の定義を見ると「Securities Act of 1933のもとでSECに登録されていない投資契約等についてはSIPCは保護しない」と書かれています。つまり「SECに登録されていればSIPCは保護する」という含みを感じ取れます。

 

そもそもSECは証券を監督、監査する機関です。名称にも「Securities」という単語が入っていますから、SECに登録されるということはその金融商品が"証券"として認められたと考えるのは自然です。

 

少なくとも金ETFといった例外的なETFが保護されるには「SECに登録されている」ことが極めて重要であることは確かでしょう。もしSECに登録されていなかったらSIPCによる保護は受けられないものと思った方が良いかもしれません。

 

例外的なETFがSECに登録されているかどうかを調べるには、日本のEDINETに対応するSECのEDGARの検索フォームにETF名を入力して検索し、「Form S-3」「Form S-1」といった類の書類のいずれかが公開されていることを確認するのが良いでしょう。

 

SECの書類フォームは沢山ありますが、「S-」「F-」「SF-」で始まるフォームの一部がSECに登録するさいに提出義務がある書類のようです。よってアルファベットで検索して「S-3」「S-1」いった何らかのフォームが見つかればSECへの登録が承認されていると言えるでしょう。

 

例えば金ETFで有名な「SPDR Gold Trust」とEDGARで検索すると検索結果がズラッと出てきます。さらにFiling Typeの項目に「S-」と入力して検索すると「Form S-1」「Form S-3」系の書類が一覧に出てくるので、SECに登録されていると言えるでしょう。

 

一方マイナーな金ETFである「ProShares Ultra Gold」については「ProShares」とEDGARで検索してみるとファイル一覧が表示されますが、Filing Typeで「S-」「F-」「SF-」と入力してフィルターを掛けても何も出てこないと思います。よってもしかしたらProShares Ultra GoldはSECに正式に登録されておらず、SIPCの保護を受けられないかもしれません。

 

コモディティETF(特に金・銀ETF)といった例外的なETFを長期保有する場合には、投資を行う前に上のような方法でSECに登録されているかどうかを確認することはSIPCによる保護を受けられる可能性を高め、安心して投資を行うためにも大切かもしれませんね。

 

ただSECに登録されていても本当にSIPCによる保護を受けられるかどうかは断定できないので、同じETFをいくつかの証券口座で分散して保有しておけば、万が一SIPCによる保護を受けられない場合でも被害を抑えることにつながるでしょう。

 

まとめ

最後に上で述べてきたことのまとめです。

 

  • 一般の株式、債券、投資信託、REITはSIPCによる保護を受けられる
  • 一般のETF(株式ETF、債券ETFなど)もおそらくSIPCによる保護を受けられる
  • コモディティETFといった例外的なETFはSIPCによる保護を受けられるか断定できない。少なくともSECに登録されていることが必要。不安であれば複数の証券口座で保有するのがよさそう
  • 通貨・商品・先物はSIPCの保護の対象外

 

米国証券口座を開いて米国株投資をスタートしたい方は、次の記事をご覧ください。
→米国証券口座を開いて米国株式投資を始める

 

最終更新日:2016年5月7日

 

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