確率際でのインパクト
いままで不治の病と言われていて、発症したらその後の生存確率が0%であった病気が、ある特効薬の開発によって100人中2人救えるようになったというニュースを聞いたらあなたはどう思いますか。 すごいことだと思いませんか!
だって、一度かかったらもう生き続けるのが不可能であった病気が、特効薬の開発によって生きられる可能性が出てきたわけですから。 確かにその特効薬を飲んでも生存確率はたった2%です。 しかし0%だったものが2%になることは、不可能を可能にするという意味でとてもインパクトのあることです。
その後この特効薬の改良が何年にもわたって行われ、この薬を飲んだ時に生存確率が57%にまで上がりました。 さらに改良が進められ、生存確率が59%に上がりました。
生存確率が57%から59%に上がったという報道を耳にして、あなたはどう感じましたか。 そんな対して変わらないじゃん、そう思ったのではないでしょうか。
生存確率が上がったとはいえ、所詮たったの2%です。 たった2%上がったくらいじゃ別に大したことがない、そんな風に思うことでしょう。
さらに特効薬の改良がどんどん進み、治癒する確率が98%にまで増えました。 さらにさらに特効薬は進化し続け、遂には病にかかった人すべての命を救うことができるようになりました。 つまり特効薬を飲むことで100%病気が治るのです。
98%→100%になったことを知ったあなたはどう感じるでしょうか。 物凄いことですよね!
98%ということは100人中まだ2人が死んでしまうのです。 それが100%によって、病気にかかってもなくなることはないのです。 確実に治せる、これは私たちにとって物凄くインパクトのあることです。
Possibility effectとCertainty effect
いままで3つのケースを見てきました。 0%→2%への改良、57%→59%への改良、そして98%→100%への改良の3ケースです。
これら3ケースはすべて2%の変化という点では同じですが、これら3つは私たちにまったく違った印象を与えます。 57%→59%に対する変化に対しては、私たちは何も印象をもちません。 しかし0%→2%の変化は私たちに大きな印象を与えます。 そして98%→100%の変化に至っては、私たちに強烈なインパクトを与えます。
このように私たちは0%近辺、100%近辺での確率の変化にとても敏感に反応します。 そして実際の確率の変化以上に体感の変化は大きくなります。
これらの効果は心理学でも名前が付けられています。 0%付近における確率の変化のインパクトをPossibility effectといい、100%付近ではCertainty effectといいます。
前回の記事で見て頂いた体感確率のグラフを思い出して下さい。 グラフを良く見ると、0%付近と100%付近でそれぞれグラフが縦方向に鋭くなっていますよね。 これがそれぞれPossibility effectとCertainty effectを反映しているのです。
次の二つの賭けを考えると、確率際でのインパクトをよりリアルに体感できるはずです。 以下の賭けがあったときに、あなたならどちらを選択しますか。
- 57%で12000円が当たる賭けと59%で10000円が当たる賭け
- 98%で12000円が当たる賭けと100%の確率で10000円がもらえる賭け
最初のケースであればきっとあなたは57%で12000円が当たる賭けを選んだと思います。 しかし2番目のケースではあなたは確実に10000円が当たる方を選んだのではないでしょうか。
この場合、2つのケースとも12000円が当たる賭けを選択する方が合理的となります。 1つ目のケースではあなたはちゃんと合理的な選択ができているはずです。 しかし2つ目のケースでは、98%で12000円が当たる方が合理的にも関わらず、あなたは確実に10000円が当たるという非合理な選択をする可能性が高いです。
これがまさしくCertaity effectによるものです。 Certainty effectはあなた自身に大きく作用して、この力が非合理な選択をもたらしてしまうのです。
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