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Loss aversionと言葉-プラス感情よりもマイナス感情の方が表現豊か?-

   いかに私たちが損に対してセンシティブであるかというのは、言葉からも見ることができます。


   一見、喜びや嬉しさといったプラスの感情を表す言葉と、怒りや悲しみといったマイナスの感情を表す言葉は同じ数だけある、そんなイメージがあります。 私もそうでした。


   しかし意外や意外、実はプラスの感情を表す言葉よりもマイナスの感情を表す言葉の方が多いらしいのです...!

カップラーメンの準備の間に

   この記事を書く直前に、一つ自分であることをしていました。 それは紙と鉛筆を用意して、用意した紙に3分間で頭に浮かんだ「ポジティブワード」と「ネガティブワード」をひたすら書く作業です。


   ここでポジティブワードとは「楽しい」のような言葉です。 一方ネガティブワードとは「悲しい」みたいな言葉を表します。


   ポジティブワードよりもネガティブワードの方が多いことを不思議に感じていたので、自分でよく使う言葉はどうなんだろうと気になりこうした作業を行ってみました。


   以下が私が書いた言葉の一覧です:


   うれしい、悲しい、楽しい、喜び、痛々しい、嘆かわしい、おいしい、まずい、不安、痛い、心地よい、おかしい、辛い、キツい、ウザい、気持ちいい、気持ち悪い、眠い、おもしろい、ウケる!、死にたい、暗い、明るい、激怒する、憤慨する、すごい、素晴らしい、酷い、イライラ、鬱だ...


   さて、これらの一覧をポジティブワードとネガティブワードとに分類してみましょう。 すると次のように分類されます:

  • ポジティブワード:うれしい、楽しい、喜び、おいしい、心地よい、気持ちいい、おもしろい、ウケる!、明るい、素晴らしい
  • ネガティブワード:悲しい、痛々しい、嘆かわしい、まずい、不安、痛い、辛い、キツい、ウザい、気持ち悪い、死にたい、暗い、激怒する、憤慨する、酷い、イライラ、鬱だ...

   ちなみに「おかしい、眠い、すごい」はポジティブとかネガティブに関係なかったり、文脈によってポジティブともネガティブとも取れるので除外します。


   こうして見てみると、なんだかポジティブワードよりもネガティブワードの方が多いように見えます。 実際に数えてみると、ポジティブワードは10個なのに対し、ネガティブワードは17個もあります。


   これは単に私の根暗な性格を反映しているからでしょうか。 それともやはりポジティブワードよりもネガティブワードの方が多いことを表しているのでしょうか。

いくつかの研究結果

   心理学者のJames Averillは全部で558個の感情を表す単語を整理したところ、ポジティブな単語よりもネガティブな単語の方が圧倒的に多いことを発見しました。


   558個の言葉のうち、ポジティブな言葉の割合は38%だったのに対し、ネガティブな言葉の割合は62%もありました。 ネガティブな言葉はポジティブな言葉の実に1.6倍以上もあるのです!


   またStephanie Van GoozenとNico Frijdaによって行われた心理学の実験に次のようなものがあります。


   ヨーロッパ6カ国+カナダの全7カ国の出身者それぞれに対して、5分間の間に感情に関する言葉を出来るだけ多く書かせました。 そして集計を取って、それぞれの国でよく出てきた感情に関する単語トップ12を集計しました。


   するとオランダを除く6カ国でトップ12の単語はポジティブな単語よりもネガティブな単語の方が多かったのです。


   つまり私たちの多くが思い浮かべる単語は、言語を問わずポジティブなものよりもネガティブなものの方が多い傾向にあるのです。



   日本語でも、うれしさを表す言葉って「うれしい」っていう言葉一つで表現することが多いですよね。 しかし例えば怒っている様子を表す言葉って「キレる」・「イライラする」・「ムカつく」といった、頻繁に使う言葉でもこんなに種類があるんです。


   また英語ですが感情を表す言葉のリストを並べてくれているサイトを見つけました。
   →感情を表す言葉リスト(英語)


   上部の「Pleasant Feelings」がポジティブワード群、下部の「Difficult/Unpleasant Feelings」がネガティブワード群です。


   単純にポジティブワード群とネガティブワード群の数を数えたところ、ポジティブワード群は122個だったのに対しネガティブワード群は147個ありました。


   こういったことを考えると、いかに人間がポジティブなことよりもネガティブなことに対して敏感に反応してしまうことがわかります。 こうした言葉一つとっても、損に対する嫌悪感というものが見て取れるのです。

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