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損得行動4パターン

   まずは次の表をご覧ください。


Prospect Theory11


   これはプロスペクト理論でとても重要である、損得行動4パターンの表です。


   以前の記事で見たように、私たちの体感確率は実際の確率と異なります。 確率の際では特に体感確率と実感確率との乖離が顕著になります。 主にこれが原因となって損得行動4パターンが現れます。


   今回はこの4パターンについて簡単に説明していきます。

①取得×低確率-何故人は宝くじに熱狂するのか-

   ①は私たちにとってプラスになるものが低確率で起こるときです。 こういったものに対して私たちは、実際よりも起こる気がすると過大評価してしまい、その結果低確率高リターンなものに対して大胆になってしまいがちです。


   例えば宝くじなんてまさにそうです。 私たちは宝くじに当たる確率がものすごく低いことを知っています。


   宝くじは購入者側に不利なギャンブルであることはよくご存じのことでしょう。 実際、宝くじで3億円当たる確率よりも交通事故で死ぬ確率の方がずっと高いくらいなのです。


   それにも関わらず日本の人口の少なくとも半分以上、つまり5000万人以上が1年の間に宝くじを買っているのです。 購入者に不利なギャンブルなのですから、合理的に考えれば宝くじを買うことはまったく馬鹿げた行為です。


   しかしそれでもなんとなく当たるかもしれない、そんな淡い期待が無意識のうちに宝くじに当たる体感確率を高め、半分以上の人たちが宝くじに興じるのです。 これを私たちは夢を買うと呼びます。

②損失×低確率-お金持ちが損に敏感な理由-

   ②はマイナスなことが低確率で起こるときです。 私たちは実際には1%なものを5%と、実際よりも高い確率で体感します。 よってマイナスな低確率なものを、もっと高確率でマイナスなことが起こると過大評価してしまい、慎重に行動するようになります。


   例えばお金持ちになればなるほど人はお金を失いたくないと思うものです。 インフレ、通貨や株の暴落、国家の破綻といった低確率のものに対してより敏感になり、無駄にお金を使わなかったり資産を分散することで大損することを何としても回避しようとします。 これは損失×低確率に対する人間の気持ちの表れといえます。

③取得×高確率

   続いて③、これはプラスなことが高確率で起こるときです。 私たちは90%を70%ちょっとのように過小に感じてしまうので、慎重な行動につながります。


   これはいままでの例で散々見てきたことです。 98%で12000円が当たる賭けよりも、100%の確率で10000円がもらえる賭けの方が魅力的に映る理由です。

④損失×高確率-何故人は投資で失敗するのか-

   そして最後④、これは損する確率が高いときです。 このときは損する実際の確率よりも体感で低いと感じてしまうので、過小評価につながりその結果大胆な行動に出てしまいます。 つまり人は損する確率が高いときに、あえてリスクの高い行動を取ってしまうのです。


   株をやっている多くの人が負ける理由がここにあります。 景気が悪くなってどんどん保有している株の株価が下がってきています。 このとき、早めに売ればもちろん損失を減らすことができます。


   しかし私たちは株価が下がっていると、きっとこれから上がってくれるはずと祈ってしまう生き物です。 どんなにこれから株価が下がり続ける確率が高くても、この確率を過小評価してしまうので中々売れないのです。


   そうやって下がり続ける株をひたすら保持することによって、気が付いたら株価暴落、大損。


   私も株ではないですが、円をドルに交換するときに似たような経験をしています。 当時1ドル102円だったのですが、できるだけお得にドルに換えようと100円切るまでずっと待っていました。 1ドル101円くらいまでは行くのですが、そこから下に中々行かず、ずっと102円近辺をウロウロしていました。


   すると突然1ドル103円、104円と急上昇...! うわっマジかよ、と思いつつ「いや、きっとこれからまた下がるに違いない...」と信じていました。


   次の日の為替相場を見たら1ドル105円... さらなる絶望に追いやられました...


   当時はアメリカFRBの金利値上げへの観測が広まっていたり、アメリカ経済の景気のさらなる回復が期待されていたので1ドルの金額が上昇しやすい状況にありました。 しかしそれでも「いや、きっと下がる!」と少ない確率に期待をした結果がこのザマです。


   物事、何事も諦めが肝心です。 特にお金に関しては。

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