疑う気持ちが情報に対処するための一番の基本

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疑う気持ちが情報に対処するための一番の基本

   いままでの記事で人間が無意識のうちに常に働かせているSystem1の性質についていろいろ話してきました。 その中でSystem1がいかに不完全なものであるかもお伝えしてきました。


   System1の不完全さは情報化社会において特に大きな弱みを露呈することになります。 何故ならSystem1ばかり頼ってしまうと、無意味な情報や間違った情報に踊らされてしまいやすくなるからです。


   では私たちは情報化社会に対してどのような気持ちを持つべきか。 それは疑う気持ちです。 疑う気持ちが情報に対処するための一番の基本になるのです。

疑う気持ちが情報に対処するための一番の基本

   何故疑う気持ちを持つことが重要なのか。 それは疑う気持ちさえ持っていれば、意識的に物事を考える心理であるSystem2に自然と働きかけられるからです。


   私たちは情報を判断するためには、直感だけではなくて意識的に物事を考える必要がどうしても出てきます。 意識的に頭を働かせないと、簡単に情報を信頼してしまいやすくなります。 また情報の表面上の内容の理解だけにとどまってしまい、そこから先の"深読み"が出来なくなってしまいます。


   意識的に物事を考えるマインドにアクセスする上で、最も手っ取り早いのが疑う気持ちなのです。


   ただし疑うモードになると頭がちょっと重くなってしまうかもしれません。 何故なら疑うとその瞬間に、System2を呼び起こすためのエネルギーが生まれてしまうからです。 System2を使おうとするとそれだけで頭に負担が掛かってしまうのです。


   よって疑うことを日常に取り入れることは最初は大変かもしれません。 しかし疑うことを日ごろから意識することで、だんだんと疑うことがそこまで苦ではなくなっていきます。


   読書を始めた頃には10ページ読むだけでも辛かったのに、慣れてくると100ページ以上軽々読めるようになりますよね。 これと同じように、疑うことも慣れていけばだんだんと自然にできるようになり、頭の負荷も減っていきます。 そしてほとんど意識することなく疑うことができるようになります。


   もちろん疑う癖がついたからといって、すぐにあらゆる情報を深読みできるようになるわけではありません。 考えたり、ネットで情報を調べるといった努力が必要です。


   しかし疑う癖さえつけておけば、情報を深読みするためのスタートラインに立てるようになります。


   疑う気持ちを癖にすることは決して難しいことだとは思っていません。 一種の心構えなので、気の持ちようで誰だって疑うマインドをもつことは可能です。


   疑うモードになってから、自分なりの深読みを行うという高尚な行為は、疑う気持ちをしっかりと根付かせてから自分のペースで行えば良いと思っています。 少なくとも疑う気持ちをもつことで情報を100%信用しない気持ちになれるので、それだけでも十分情報に流されないための効果はあります。


   情報化社会で疑う気持ちは必須です。 変な情報に流されないためにも、最低でも疑う心構えを持つことをおすすめします。

情報には意図がある

   私たちは情報を見るときに、情報を信頼できるのか、自分にとって重要なのか、情報を提供した人はどういう意図をもって情報を流したかなど見えない部分を考慮しないといけません。 いくら情報を知ったところで、こうした見えない部分がわからないと無駄な情報に振り回されるだけではなく、情報に操作される情報弱者になりかねませんから。


   例えば景気が上がっているときは「いま投資が熱い!」なんて記事がよく散在しています。 こうした情報に隠れたニュアンスとは何でしょうか。


   一言で言ってしまえば、記事を書いた人や所属する企業が注目を集めるからです。 景気が良い状態で株式市場に対する不安が払しょくされている状態で、こうした「投資が熱い!」なんて記事を書いたら金を儲けたい輩がいっぱい集まってきますよね。


   逆にもし景気が良いときに「こういうときに投資を行うのが最も危険」なんて記事を書いたら、多くの人をシラケさせます。 せっかく多くの人の注目を集めるチャンスなのに、みすみすチャンスを失うことになりますから。


   このように情報を見る目線を、読み手目線ではなく書き手目線に立って疑うだけで、まるっきり違ったニュアンスを受け取ることができます。 情報提供なんていうのは基本的に何らかの見返りを意図して行うものですから。 タダ飯なんてないのです。


   情報を理解するのではなく、情報の意図を汲み取る。 これが情報を知る本質であり、情報の意図といった"見えない情報"を見るための一番の基礎が物事を疑う心構えなのです。

ご利用は計画的に

   最後に、疑うことは情報を読んだり聞いたりするときなど、"必要なときにだけ"使えるようにしてください。 理由は普段からずーっと疑ってばかりいると、周りから"難しい人""陰湿"のようなレッテルを貼られる可能性があるからです。


   "頭の中の考え"と"表情や口調"は連動しています。 疑うモードになってSystem2を引っ張ってくると、自分では気付かないうちにしかめっ面になったり、口調がキツくなったりするものです。


   普通に友達と会話するときとか、周りの人と雑談するときに頻繁に疑うモードになることはおすすめしません。 そういうときは楽しくいきましょう、楽しく。


   ご利用は計画的に!


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