確証バイアス(Confirmation Bias)とは-自己肯定や社会肯定の根幹-
私たちは誰でも自分の考えが正しい、自分の考えを人に認められたいという願いがあります。 また自分の頭から簡単に引っ張り出せる物事に対して、疑うよりもむしろ信じてしまう傾向にあります。
こうした人間の性質を総称したものが確証バイアス(Confirmation Bias)です。
確証バイアス(Confirmation Bias)とは
確証バイアス(Confirmation Bias)とは自分が支持している考え、世の中に広く受け入れられている考えなどを"正しいという前提のもとで"物事を考えてしまいやすい人間の傾向のことです。
要するに自己肯定や社会肯定の根幹をなすのが確証バイアスなのです。
確証バイアスの例をあげるとキリがないですが、例えば次のようなものが確証バイアスが働いている例です:
- ふと手に取った本の概要部分の説明が自分の考えに共通していることがわかると、「良い本だ。自分の考えは間違ってないんだ」とついついニンマリしてしまう
- 大きな地震が100年間起きていないため今後も大きな地震は起きないと信じている人は、「最悪の場合を考えて備えた方が良い」という忠告に対して「100年も起きていないから大丈夫」と反論して、忠告を無視したり臆病者だと罵倒したりする
- 医者は一度患者に対して診断結果を下すと、以後はその診断が正しいとの前提で治療を進める
- 自分が考えている仮定を裏付けるように見える統計結果を得られると、例えそれが偶然得られたものでも必然と考えてしまう
- 広く世の中に受け入れられている考えに反することを述べると、確証バイアスに掛かっている多くの人から信用してもらえず多くのバッシングを受ける
このように確証バイアスによって、私たちは自分が信じていたり正しいと思っている出来事を無意識のうちにひいきしてしまいます。
逆に自分の考えに背くような情報に接したり出来事を経験すると、批判的になったり無視したりしてしまうのです。 そもそも自分の考えに背くような考えを自然と避ける傾向になります。
確証バイアスはかなり広い範囲にわたって人間に見られます。 一つの心理的、認知的プロセスによって確証バイアスが引き起こされるのではなく、いろんな原因や方法によって確証バイアスというのは生じると考えたほうがよさそうです。
確証バイアスにもいろんなプロセスがあることを、上の地震の例を考えてみましょう。
例えば確証バイアスは無意識の間に生じる場合があります。 純粋にいままで長年住んでいる地域に地震が起こっておらず、幼少の頃から両親や祖父母から「この地域はいままで地震がなくて安心なんだよ」といわれたら、自然とこの考えを受け入れてしまうでしょう。
そうやって子供の頃から地震がないと聞かされると、それが当たり前のように思って無意識に働くSystem1によって勝手に地震がないと決め込んでしまうでしょう。
しかし単なる無意識や直感によって、地震が起こるかもしれないという可能性を完全に無視しているだけとも限りません。 場合によっては地震が起こるかもしれないということを薄々わかっているにも関わらず、それをある種意図的に無視しようとする場合もあります。
地震が起こるという怖い現実を考えると、誰しも嫌な気分になります。 そんな大きな地震が起こるなんて想像したくもありません。
そういった嫌悪感から逃げようとして、大きな地震はそんなにすぐには起こらないんだ、大丈夫なんだと無理やり信じ込む。 今後住んでいる地域に地震が起こる蓋然性があると地震学者の人が言っていても「学者の予知は当てにならない」と否定する。
このように都合の悪いことを避けて都合の良いことを受け入れることによって、安心感を感じられる。 こういった嫌なことを避けて安心感を得たいという自己都合によっても、確証バイアスが働くといえます。
無意識だけではなく「自分に都合や目的に合わせて考える」という、人間の意識的な傲慢さといったものも確証バイアスが引き起こすのです。
参考文献
・Confirmation Bias: A Ubiquitous Phenomenon in Many Guises(→リンク)
関連リンク
・確証バイアスは時として自らを間違った方向に向かわせる元凶になり得ます
・どうやら人間は行動の源は信じることにある?
→人間の行動は信じることから始まる?-自ら信じられることを能動的に探すことが大切-
・医者でさえも確証バイアスによって知らず知らずに誤診をしてしまうものなのです
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